いつも笑顔で!(「水平線の先にある夢」の続きブログ)

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アトポスと松崎レオナ

島田荘司の本格超長編ミステリー
「アトポス」
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を2か月半かかってやとこさ読み終えた。

この作品、とても分厚く、1000ページ弱ある。
島田荘司本格ミステリー論を意識し始めてから
「暗闇坂の人喰いの木」
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「水晶のピラミッド」
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「眩暈」
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と3部続けて超長編が続いていたが、
その4段目が今回の作品だった。

今回は完全に松崎レオナが主役を張っている。
「暗闇坂の人喰いの木」
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でデビューした松崎レオナも先の3作でも眩暈以外で登場しているのでキャラクターとしてだいぶ島田作品になじんできた感はあった。

この松崎レオナは
「サテンのマーメイド」
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で出てきたサラ・マーメイドばりのちょっとそこらでは見かけないような美貌の持ち主で
とびきりの美女のハリウッド・スターである。
そういう美女のかかえるプライドとか美貌に関するこだわりなど
島田作品におなじみの女性論をそこかしこに感じる作品でもあった。

エリザベート・バートリ」の話しもその1面で、その話しだけで200ページも費やしている。
これだだけで1冊の本ができてしまうが、この話しは直接には今回の殺人事件には
関連してこない。

その後、ハリウッドで誘拐殺人があり、
突然話しが上海に飛んだりする。

この時点で500ページを超えるが、まだ、この時点でも本作品の舞台である
イスラエル死海のシーンにならない。

死海の殺人の章に映っても残り300ページになるまで御手洗は登場しない。
本当に長い。

電車の中でちょっとずつ読んでいたが、眠くなるので本当になかなか進まなかった。
本自体が分厚く辞書みたいなハードカバー本をカバンに入れて通勤していたので
それも骨が折れた。
最後の方になってたまらず図書館に文庫版をリクエストして最後の100ページからは
文庫版を読んだ。

文庫版は解説も付いているので、いいと思う。


ここから下は読んでない人は読まないでください。

島田作品によくある細部へのつっこみをしてみたい。

1.「エリザベート・バートリ」の話しは必要なのか?
 確かにこれはこれで楽しめたが、読者をけむに巻くための前奏としても長すぎるでしょ。

2.前半のレオナの自宅での殺人未遂シーン。あれはれきとした変質者で犯罪でしょ。

3.上海のシーンでの人魚の描写はとても男性のものとは思えないし、ヒレを横に動かしているという説 明があったけれど、それを人間ができるのか?いくらなんでもすぐに人間とわかるでしょ。
 これも読者をけむに巻くための布石とはいえ無理あるなあ!

4.一番笑えるのが、死海セットの頂上の殺人。いくらなんでも海上で押して体の不自由な人が健常者を 押 して突き刺して刺さるとは水の抵抗からしてありえないでしょ。

5.死海のセットの内部の描写や回廊の説明の描写は図が少しあっても複雑すぎてなんだかわからない 
 よ。

6.あんなに長いと、最後の方でシャロン・ムーアやジエゴがと言われても、もう前半のシーンでのこと
 を 忘れているので何やらぴんとこない。

7.謎解きのシーンでなぜ御手洗はバート。アスティンの犯行とわかったのか?

8.いくらアトピーとはいえ、作中で描写されるほどの重症者はそうはいないと思う。
 これは患者の会からクレームがあったそうだからやはり誇張のしすぎだと思う。



これから下はこの作品の良かったところです。


A.松崎レオナなど美女のプライドと美意識など、いつもながらの女性論は楽しめた。

B.この作品を書いたころの島田作品にみられる社会的な問題(薬害、差別、有害物質)などに
  対するこだわりの描写はうれしい。

C.旅情を感じさせる場面の移り変わりはいい。
  これは「暗闇坂の人喰いの木」でのスコットランドとイギリスのシーン。
  「水晶のピラミッド」でのカイロを訪れるシーン。
  「眩暈」でのインドネシアや北海道の幌延のシーン。
  など、作品の印象は場所のイメージとして強く残るので、訪れてみたくなる魅力がある。


長かったですが、これからしばらくは資格試験のために本格的な読書はちょっとお休み。
また、2、3か月後には面白い本を読みたいです。

みなさん、おすすめの本があったら紹介してくださいね。